船井財産コンサルタンツ 取締役不動産事業部長 松浦 健
全般的な昨年の傾向
昨年一年の不動産市況を振りかえりますと、一言、非常に厳しい1年だったというのが結論です。2007年後半のサブプライム問題以降は、厳しい不動産市況が続き、特に昨年前半は最悪の状況でありました。その後、収益率が大幅に改善された都心の収益不動産を中心にエンドの投資家のニーズが高まり、一部物件に限り取引が活性化してきました。
ただし、物件価格の下落に加えて比較的安定していたオフィス賃料の下落には全く歯止めがかからない状況が続いております。特に再開発で建てられた都心のシンボル的な最新のビルにおいての空室率及び賃料下落幅の拡大は、各企業のオフィス需要の縮小という構造的な問題に寄与しており、不動産市況のみならず日本経済全般にも暗い影を落とす問題となっております。
2010年の見通し
上述した問題を総合的に捉えると、今年の不動産市況もかなり弱含みで推移することが想定されます。当然、極端な消費マインドの冷え込みやマスコミ報道等に起因した、行き過ぎた物件価格や賃料の下落には歯止めがかかるものと思われますが、この歯止めも都心の一部不動産に限られたものとなり、全国的にはあらゆる用途の不動産商品の下落が続くものと考えて間違いないでしょう。
もちろん不動産市況は金融の動向や政府の住宅政策等による影響が大きく、この点では一部で改善される可能性はありますが、本来的な需給の点では、人口減、経済全体のパイの縮小等の構造的な問題は避けようが無い状況です。したがって、国際的にも圧倒的な競争力がある一部都心の特殊地域のみでは取引が昨年以上に活発化するケースも想定されますが、その他の地域では昨年以上に厳しい状況が続くものと思われます。
総 括
ここまで述べてきた通り、今年も厳しい不動産市況が続くことが想定されますが、今後の顕著な傾向と致しましては、完全な二極化が更に加速して進むことです。一部都心の希少性の高い不動産商品は、一定以上の需要が見込まれ、昨年以上に価格も上昇する可能性があります。また、この競争力のある物件購入に参加できる企業・投資家も限られたメンバーとなってくるでしょう。
総括致しますと、一部競争力のある不動産商品に対して資金力のある一部の企業・投資家のみが参加するマーケットが当分の期間続くことが想定されます。逆に、それ以外の不動産商品は総じて厳しく、また上述した企業・投資家以外では、優良な投資物件を購入することは難しくなるでしょう。
いずれに致しましても、幅広く裾野まで不動産取引が行なわれる健全な状況になるまでは相当の時間を要することが想定され、その中で今年も厳しい調整局面の1年と理解する必要があります。
(株)ロータス21・週刊「T&Amaster」344号掲載



